2008年03月25日
∟ 谷本先生インタビュー(後編)


ガミガミ言う事が、私の指導方針!
編 : かなり戦術が重要な競技のようですが、戦術は先生が考えているのですか?
谷本先生 : 決して私ひとりで作ったものだとは思っていません。ハンドボールに携わってきた20年間で、様々な方から学ばせて頂いたことを、自分自身で吸収し作り上げたものなので、全てを私が作ったというよりは、人とのつながりの中で勉強させて頂いた教えだと思っています。
編 : 先生の指導方針はどのようなものですか?
谷本先生 : 私は大学卒業のときに、監督から、「君たちはハンドボール学部日本文学科の卒業生ではないんだ。文学部日本文学科の学生なんだぞ!!」と。
ハンドボールで食べていくことはできないんだ。大切なのは、ハンドボールを通じての人間形成であって、将来立派な大人になるためにやっていると、つまりはこういう事を監督は伝えたかったんだと思います。
この言葉が今でもとても印象に残っていて、私の指導にも活きています。
勝つか負けるかだったら、もちろん勝ちたいですし、勝って大きな大会に出たいですが、勝ち負けよりも、生徒が人間形成を学べるためにハンドボールに一生懸命取り組んでいく事のほうがずっと大事なんです。学校の授業では学べない忍耐力、協調性、連帯感などといったものをしっかり学んで、将来立派な大人に成長してもらいたいというのが私の指導方針です。

谷本先生 : 色々な伝え方があると思いますが、今の子供たちは、親に怒られた経験の無いまま成長してきている子もたくさんいます。やっぱり「大人は怖いんだ」というのは子供たちの成長にとって大切だと思うんです。
そんなメッセージも、生徒には伝えたい事の3割しか心に残せないのではないかと思うと、10教えて3なら、100教えて30分かって欲しいので、ついつい私はガミガミ言ってしまいがちなんですね。(笑)
つまらない事を言えば、服装が乱れているとか、もっと勉強しろ、だとか、ハンドボールの戦術や技術より、人間としてどうかというほうがよく話をしている気がします。
なので、私にとっては逆に一番苦手な部分はついつい怒りすぎてしまうことなんです。
「農大三校の生徒は、先生の言っていることを守ろうと一生懸命努力しているじゃないか。いつもガミガミしかってばかりいないでもっとほめろよ。」部のOBやまわりの関係者の方からもよく言われてしまいます。
怒るだけじゃダメだということは、自分自身もよく分かっているんです。だから10回怒っても、せめて一回はほめてやろうと常に意識はしているんですが、なんとなく照れくさいんですよね。(笑)
編 : 先生の気持ちが少しでも伝わっているといいですね!!!
谷本先生 : いつか卒業生に、「先生は怒ってばかりじゃないよ。いい試合をした時はガッツポーズをして一番喜んでくれていたし、僕たちの事を見てくれているんだって思ってました。」と言われたことがあるんです。それを聞いたときは、少しでも私のメッセージが伝わったのだと、嬉しく思いました。
つい先日も3年生の生徒が私について作文を書いた際に、「3年たってようやく谷本先生の良さがわかった」と書いてくれたんです。現役のときに気付いてくれるのが一番ですが、社会に出て失敗しそうになった時に、私の言っていることにいずれ気が付いてくれればいいと思います。

谷本先生 : 埼玉屈指の競合校として10年連続全国大会に出場している高校が高い壁となって全国出場を阻まれていたんですが、この夏は全国高校総体が地元埼玉開催ということで、埼玉県から全国大会へ2チーム出られるんです。この機会を利用して、どうにか全国大会に出場したいです。これは埼玉県内すべてのチームの目標だと思います。南部地区には多くの経験者が集まる中、農大三校は未経験者ばかりから始まったチームですが、何もしなければ可能性はゼロなので、何とかして一矢報いたいと思っています。できることをすべてやって、全国大会に出られなかったらあきらめもつくだろう思いますから。とにかく今年の夏、全国大会出場を目標にしています。
編 : 全国大会に向けて特別な準備は進めていますか?
谷本先生 : モントリオールオリンピックの幻の韓国代表と呼ばれている李相玉さんをコーチとして招き、月2~3回の割合で指導を受けています。
指導の悩みや、試合展開での相談などに応じて頂くのをきっかけに、埼玉インターハイへ望む私たちの熱意に共感し、コーチを引き受けてくださいました。技術面ではもちろんですが、母親からの目線で子供たちをサポートしてくださり、とても参考になるような指導のアドバイスなど、とても強力なアドバイザーになって頂いております。
編 : 最後に先生の好きな言葉を教えて下さい。
谷本先生 : いつも心の中で思っていることは、「常に誠実でありたい」です。
僕は何に対しても「誠実」という言葉が好きなんです。確かに「誠実」という面で指導に当たるときに、「怒ってばっかり」と思われがちですが、常に私は一生懸命でありたいし、何に対しても自分のできる限りのことはすべてやりたいという想いがあるんです。私にとっての「誠実」とは、人に対して一生懸命であることだと思っています。だから私は、本気になってやっていきたいんです。
●2008年1月 東京農業大学第三高等学校ハンドボール部練習場横のテントにて
(取材/山下悠毅 文/三和愛子 写真/小山基彰)
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